財産分与

共有財産と特有財産

財産分与の第一義的な意味は、夫婦が協力して形成した財産を、離婚時に清算・分配することです(これを清算的財産分与といいます)。
ただし、場合によっては慰謝料的財産分与や扶養的財産分与もあります。
婚姻中に形成された財産が全て財産分与の対象になるわけではありません。財産分与の対象となるのは、婚姻中に「夫婦が協力して形成した」財産、つまり共有財産です。一方、結婚前から持っていた財産や、相続や贈与で取得した財産、交通事故で得た慰謝料などは財産分与の対象外となります(これを特有財産といいます)。
財産分与においては、共有財産は原則として夫婦で2分の1ずつ(半分ずつ)分けられます。しかし、慰謝料的財産分与や扶養的財産分与の場合、または夫婦の一方が特に高い貢献度を示した場合には、その一方が取得する割合が2分の1よりも多く離婚からの2年の期間制限があります。

 以下、法務省のホームページからのQ&Aです。

Q1:財産分与とはどのような制度ですか
(A) 離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。 財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。

Q2:財産分与の額はどのように決めるのですか。
(A)夫婦の財産の清算を基本として,Q1で述べた(2)と(3)の要素も考慮しながら,まずは当事者間の協議によって金額を決めることになります。
当事者間で協議が調わないときや,協議をすることができないときは,家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることができます。
家庭裁判所の審判では,夫婦が働きをしているケースと,夫婦の一方が専業主夫/婦であるケースのいずれでも,夫婦の財産を2分の1ずつに分けるように命じられることが多いようです。
裁判所における財産分与の手続の概要についてはこちら (裁判所のサイトに移動します。)

Q3:財産分与の対象となる財産は,夫婦共有名義の財産ですか。
(A)夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても,実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば,財産分与の対象となります。例えば,婚姻中に夫の収入で土地建物を購入して夫の単独名義になっている場合であっても,妻が家事等を分担して夫を支えていたときは,その土地建物は,実質的には夫婦の財産といえると考えられます。

Q4:財産分与はいつすればよいですか。
(A)離婚までに協議をしておき離婚と同時に分与してもよいですし,離婚をしてから分与を請求することもできます。
 ただし,離婚から2年が経過すると,家庭裁判所に申立てをすることができなくなりますので,ご注意ください。ることがあります。

財産分与と慰謝料とは別個のもの

慰謝料は、離婚において有責配偶者に対して損害賠償として請求できるものです。一方、財産分与は、夫婦が共同で築いた財産を清算するという意味を持っています。つまり、離婚の原因が相手側にない場合に請求できる慰謝料とは異なり、結婚中に資産の形成に協力していた場合、自分に離婚の原因があったとしても財産分与を請求することができます。
財産分与の請求は、慰謝料とは別々に行うことも、一括して請求することも可能です。一括請求をする際は、相手方との金額交渉の前に、どの部分が慰謝料で、どの部分が財産分与に該当するのかを明確にしておくことが重要です。

財産分与の対象となる財産の具体例

住宅(住宅ローン)

夫が妻と結婚する前に住宅ローンを組んで購入した家であっても、婚姻後に家計から住宅ローンの支払いが行われている場合、その家は財産分与の対象となる可能性があります。また、婚姻中に双方の実家から頭金の一部を援助してもらい、その後住宅ローンを組んで家を購入した場合も、当然財産分与の対象になります。
さらに、夫婦で購入した住宅が住宅ローン付きで、オーバーローン(ローンの残高が不動産の価値を上回っている)状態の場合、不動産を売却した際に残った借金は基本的に1/2ずつ負担することになります。しかし、具体的な財産状況によって異なることもあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

1:離婚時の財産分与による所有権移転登記

離婚の際、夫名義のマンションを妻に財産分与する事例が多いのですが、その際、財産分与を原因としたマンションの名義変更(所有権移転登記)が必要になります。

2:離婚時の住宅ローンの問題

所有権の名義が変更できても、住宅ローンの借入名義(債務者の変更)の変更の難しさがあります。離婚に伴う、住宅ローンの債務者の切り替えについては、通常金融機関は消極的です。借換等金融機関を変えて、ローンの組み換えが可能か否かを検討します。

3:離婚に伴う財産分与とは

民法768条は「協議上の離婚をした者の一方は他方に対して、財産の分与を請求することができる」と規定しています。
財産分与には、「結婚生活中の夫婦の財産の清算」「有責配偶者の慰謝料」「離婚後に生活が困窮する配偶者に対する扶養」の性質があると言われています。
財産分与は一般的に夫婦の財産の清算の意味合いが強いと言われており、離婚訴訟などでは、夫婦で築いた財産の半分程度の分与義務が認められることが多いようです。

4:離婚に伴う年金問題

日本年金機構のホームページをご参考ください。
http://www.nenkin.go.jp/n/www/index.html

5:財産分与による不動産の名義変更(所有権移転登記)を申請する際には、次のような書類が必要になります。

・登記原因証明情報

(財産分与を定めた離婚協議書や離婚調停調書及び戸籍謄本)登記申請のみに使用する書類として登記原因証明情報を作成するほか、不動産の財産分与について定めた離婚協議書や離婚調停調書が登記原因証明情報となります。
なお、離婚届出の前に財産分与の協議を行なった場合、財産分与の効力が発生するのは離婚届出の時点になりますので、効力発生時点を証する資料として離婚届出の記載のある戸籍謄本が必要になります。

・財産分与をする側の権利証(登記済証)または登記識別情報

協議離婚による財産分与の場合、財産分与をする側が不動産を取得した際の権利証または登記識別情報が必要ですが、裁判上の離婚(調停、審判、訴訟)などの場合には必要ありません。

・財産分与を受ける側の住民票
・財産分与をする側の印鑑証明書
 協議離婚による財産分与の場合、財産分与をする側の取得から3ヶ月以内の印鑑証明書が必要ですが、裁判上の離婚(調停、審判、訴訟)などの場合には必要ありません。

・登記委任状
 財産分与による所有権移転登記申請を司法書士などに依頼する場合、登記に関する委任状が必要になります。
・固定資産評価証明書
 財産分与による所有権移転登記には固定資産の評価額に応じた登録免許税が必要となりますが、これを計算するための資料として固定資産評価証明書を添付します。

6:氏名変更・住所変更の登記

夫婦が離婚をした場合、通常は復氏による氏名変更や引越しによる住所移転が伴います。
所有権登記名義人について氏名変更や住所移転があった場合には、これらを登記簿に反映させるため、所有権登記名義人氏名変更(住所変更)の登記を申請しなければなりません。

7:住宅ローンの問題

所有名義を変更しても、住宅ローンの債務を離婚相手のままにしておくと次のようなトラブルが発生します。
①ローン返済の通帳管理
②ローン完済時の抵当権抹消書類の受取
③離婚相手が次の住宅ローンを組めない(政策的に住宅ローンは1本です)
上記問題の処理方法として、金融機関の借換等をまず検討します。借換ができれば、抵当権の借換手続きをします。
また、借換ができない場合は、公正証書等を作成して、離婚相手と住宅ローンの返済方法を約束します。

8:税務問題

(国税庁)https://www.nta.go.jp/
① 贈与税
 離婚に伴って財産分与を行なう際、分与する財産の額が不相当に過大である場合は、贈与税が課されることがあります。

②譲渡所得税
 財産分与の義務は夫婦の財産分与協議によって初めて生じるのではなく、離婚によって当然に生じるものと考えられています。つまり、離婚により、夫婦の一方は他方に対して当然に財産分与義務を負うことになります。
そして、現実に財産分与を行なうことにより、この財産分与義務の消滅という対価を得ることとなりますので、場合によっては財産分与をした側に譲渡所得税が課されることもあります。

③不動産所得税
 結婚中に購入した不動産の財産分与については、基本的に不動産取得税は減免されます。
 しかし、結婚中に購入したのではない不動産(例えば、相続により取得した不動産)の財産分与については、不動産取得税は減免されません。
 (県税事務所http://www.pref.chiba.lg.jp/zeimu/aramashi/shurui/fudousan.html

退職金

たとえば、夫が近い将来退職金を受け取ることが確実な場合、その退職金も財産分与の対象となる可能性が高いです。ただし、別居期間がある場合は、分与の対象となるのは婚姻後の別居開始時までの期間に相当する退職金となります。

生命保険の解約返戻金

夫が長年加入している生命保険が解約返戻金のあるタイプの場合、その解約返戻金も財産分与の対象となります。具体的には、別居時などにおける解約返戻金額を算定し、夫婦で2分の1ずつ分与することになります。

学資保険の解約返戻金

子供のために学資保険をかけており、解約返戻金が生じる場合、その保険の掛金が家計から支払われているため、夫婦の共有財産となります。このため、財産分与の際には2分の1ずつ分け合うことになります。ただし、学資保険に関しては、実務上、子供の親権を取得した側がその保険を受け取ることが多いです。

夫婦以外の他人名義の財産

  • 名義人が夫婦以外の場合の財産分与について

財産の名義人が夫婦以外の者(例えば、配偶者の両親など)であっても、その財産が夫婦の労働によって取得され、将来的に夫婦の双方または一方の財産になる見込みがある場合は、財産分与の対象となるという裁判例(熊本地裁八代支部判決昭和52年7月5日)があります。

  • 夫婦の一方名義の財産について

夫婦の一方の名義となっている財産でも、夫婦が協力して貯めた貯金や購入した不動産、株式などは財産分与の対象になります。

離婚した後からでも請求できるのか

「離婚時に財産分与の話をする余裕がなかった」
「急いで別れたくて家を飛び出してしまった」
「慰謝料は請求したが、財産分与については知らなかった」
といった理由で財産分与を請求できなかった場合でも、離婚から2年以内であれば請求することができます。

【離婚に伴う年金問題】

日本年金機構のホームページへ!
http://www.nenkin.go.jp/n/www/index.html